伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第六十四章 大木も、最初は小さな苗だ


安定している組織は維持しやすい。
しかし、先行きが見えないときは、
計画を立てにくい。


固い金属ももろいと溶かしやすく、
小さいうちは散らすこともできる。
形態が確定しないうちに手をうち、
乱れないうちにまとめるのが秘訣だ。


両手で抱えるほどの大きな樹も、
最初は小さな苗なのだ。
高い建物だって、
細かな土の積み重ねだし、
千里の道も一歩から始まる。


成功を焦る人たちは
こうした積み重ねをしない。
考えなしに行動する人たちは、
自分の考えに固執して、
たいせつなことを見失う。


すぐれたリーダーとなる人は、
小さいものごとが大きくなるという
過程を理解している。
なにかに注力するのではないけれど、
見守って育てていくことが、
たいせつだと考えている。


みんな、なにかを行うときに、
いつも完成まぢかに失敗する。
初心を忘れずに、
慎重に、
こつこつと積み重ねていけば、
失敗することはないのに。


すぐれた人は、
世間の人が欲しいと思うものを
欲しがらない。
手に入れにくい品であっても、
貴重だからと
特別に扱ったりしない。


学校では学べないことを学び、
大衆が突っ走ったら、
それを是正する。
自然の木々が育っていくのを見守るように、
決して無理をしようとはしない。


  • 「心が安まる老子」の著者伊藤淳子さんからメールを頂きました

下記に掲載します。
大西様
「心が安まる老子」の翻訳者の伊藤淳子です。ブログでのご紹介、ありがとうございます。
今日(というか、さっき)テレビで、農薬散布によって、子供たちの神経回路の発達異常が起るというよう
なレポートを放映していました。農家のみなさまのご苦労を思うと、勝手に食べるだけの都会人たちの勝手な言い分は心苦しく思う部分もありますが、農業や食は、日本の未来をも担っていると考えますと、やはり有機栽培や、せめて低農薬で作っていただきたいと思うばかりです。
伊藤淳子