書籍紹介

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第八十一章 大自然のように大きな心を いつわりない言葉は、 美辞麗句ではない。 美しく飾り立てた言葉は、 信実さに欠ける。 善人は多くを語らず、 雄弁な人物は善人ではない。 知識人といわれる人は、 実はたいした知恵はなく、 博識といわれる人もまた、 …

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第八十章 小さな、幸せな地域づくり 国は小さく、国民も少ない方が 統治しやすいので、理想的だ。 そこで、 大勢を統率できる器量を持った人材がいても、 その能力を発揮させないようにすべきである。 人々は、一生懸命に、 生命をたいせつに暮らすよう、 遠…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第七十九章 人の心は天にまかせる 大きな怨みを受けてしまったら、 必ずシコリが残る。 どんなやり方で和解しても、 完璧な和解などありようがない。 怨みを持つ側にとっては それなりの理由があるのだろうが、 受ける側にとっても言い分がある。 こちらに非…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第七十八章 常識と反するもの 世の中で、水ほど柔らかく弱いものはない。 それでいて、固くて強いものを攻めるには、 水に勝ものはない。 弱いものは強いものに勝ち、 柔らかなものは堅いものに勝つ。 それは、世の中の誰もが知っていることだけれど、 実際…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第七十七章 正しい采配 天の道というものがあるなら、 それは弓を張るときのようなものだ。 中央の高い部分は抑え、 下のほうの低い部分は引き上げ、 余るところがあれば減らし、 足りないところがあれば補う。 このように、 天の采配とは、余っているところ…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第七十六章 強さより柔らかさ 人間は、 生まれたばかりの頃は柔らかく、か弱いが、 死ぬときには固く、硬直する。 どんなものでも、 最初は草木のように柔らかく脆(もろ)いが、 死ぬときには枯れて、固くなる。 頑固に固執する姿は、 死んでいくことに等し…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第七十五章 長命に頓着しない 暮らしが豊かにならないのは、 為政者が税を多く搾取するからで、 人々は食べることにも事欠いていく。 税によって、人々は貧しくなる。 いい国を作れないのは、 政治家の干渉が強すぎるからで、 干渉しようとするから、 治める…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第七十四章 処罰は天に任す 人々が自暴自棄になって、 死ぬことをなんとも思わなくなったら、 死に対する恐怖によって圧力をかけても、 脅すことにはならない。 しかし、死というものに対して 怖れを感じているなら、 秩序を乱すものは捕らえられ、死刑に処…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第七十三章 なにもかも天が裁く 人を裁くとき、 積極的で勇敢なリーダーなら、 さっさと罰するだろう。 しかし、 決断に時間をかけて 迷うリーダーであれば、 罪を犯した人もいつか活かされる。 積極的に裁くべきか、 それとも優柔不断にすべきか。 どちらも…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第七十二章 圧政ではなく、たおやかな采配を 人々が生活に困窮し、 権威や権力を畏れなくなると、 さらに大きな力や法律で 押し付けようと考える 権力者がいる。 それでは、世の中は乱れ、 混乱する。 指導者は、 人々が住むところを追い立てたり、 暮らしを…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第七十一章 知らないことを知る 生きていくうえで、学ぶことは多い。 知っていると思っていることでも 熟知しているとは限らない。 まだまだ知らないことが多い。 そう、謙虚に受け止めよう。 知らないことなのに、 知っているふりをする人が、 世の中には少…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第七十章 玉のような真実を心に抱く 私の言葉は、 とてもわかりやすく、 実行しやすいのに、 理解する人は少なく、 実行する人もいない。 私の言葉の ひとつひとつには、 ちゃんと理由があり、 私の行動には、 中心となる信念がある。 ところが、 世の中の人…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第六十九章 相手を侮(あなど)るな 戦力になる部下は、 次のように動かすといい。 ライバルが攻めてきたら、 自分たちは主導せずに迎え撃ち、 ほんの少し進展することを考えるより、 思い切って後退してみろ、と。 拠点がないところに陣地を作り、 肘がない…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第六十八章 不争の法則 立派な武将ほど、 猛々しいところがない。 交渉上手な人は、 感情にまかして怒ったりはしない。 最終的に勝利に持ち込むことがうまい人は、 決して、相手と戦ったりはしない。 また、人を使うことが上手な人は、 腰が低いように見える…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第六十七章 大きな器、小さな器 世の中の人はみな、私のことを、 大きな事ばかり言っているだけの 愚か者だという。 でも、 あるがままに生きる術を知っていて、 それを実践している大物だから、 愚か者に見えるのだ。 頭がよい利口者に見えるとしたら、 あ…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第六十六章 大河や大海となる たくさんの川が流れ入る谷間は、 大河や大海に続いている。 その様が、堂々と王者のように見えるのは、 低地にいて、 すべてを受け入れているからだ。 人々の上に立って采配をふるいたいなら、 言葉を慎み、 自らをアピールしな…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第六十五章 知恵で考えさせず、心をつなぐ 欲のない生き方を 実践させようとした指導者たちは、 人々を聡明にしようとしたのではない。 かえって、愚かにしたのだ。 人々がいらぬ知恵を持つと、 打算や計算を覚え、 統率することが難しくなる。 知識を持った…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第六十四章 大木も、最初は小さな苗だ 安定している組織は維持しやすい。 しかし、先行きが見えないときは、 計画を立てにくい。 固い金属ももろいと溶かしやすく、 小さいうちは散らすこともできる。 形態が確定しないうちに手をうち、 乱れないうちにまと…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第六十三章 小さく地道にこつこつと 無作為に生きよう。 アクションを起こす必要はない。 物足りない味付けの料理のようだけれど、 満足しよう。 小さいものごともたいせつにして、 少ないものも充分な量だと考えよう。 怨まれたら、感謝の気持ちで報いるよ…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第六十二章 生きるという広いこころ あるがままに生きよう。 すべてのものは、 あるがままに、 生まれ出る。 あるがままに生きるという考え方は、 世界の核のようなものだ。 それは、 善人には、 大切な宝のようだし、 悪人にとっても、 自分の命のあるとこ…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第六十一章 大きな組織の務め 大きな組織を大国とすると、 大国とは、広大な川の下流のようなものだ。 そこは、小さな川が流れてきて、 天下の交流場所となる。 それは、たとえていえば、 世界中の男性が魅了されてしまう 女性のようなものだ。 魅力的な女性…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第六十章 小魚を煮るように治める 大きな国を治めようとすることは、 小魚を煮ることに似ている。 やたらつつきまわしては 身がくずれ、味も落ちてしまう。 そんなふうに、なんでもかんでも干渉して、 権力で押さえつけようとしては、 いい国をつくることは…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第五十九章 つつましさこそ、力の根源だ 人を雇い、仕事をまっとうするには、 つつましく、節約することが大切だ。 ひたすらつつましくあれば、 早くから方向性が定まる。 方向性が定まったなかで、 身の丈にあったやり方をしていけば、 品格も風格も、それ…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第五十八章 いいことも、悪いことも、結局は同じ 政治が、おおまかで穏やかなものなら、 人々にわかりやすいので、暮らしやすい。 政治が、こまかくわずらわしいと、 人々はこせこせと、ずる賢くなる。 不幸は、そのなかに 幸せが詰まっている。 幸せには、…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第五十七章 大雑把でいこう 国を統治するには正々堂々と行い、 兵隊をつかうには、奇策を用いるのがよいと言われる。 しかし、 天下をとるためには なにもしないのが一番だ。 なんでそんなことがわかるかというと、 次のようなことからわかったのだ。 あれを…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第五十六章 世俗の塵にまみれる ものごとの本質がわかる人は、 余計なことは言わない。 よくしゃべる人ほど知ったかぶりで、 ものの通りなどわかっていない。 自分らしく生きたい人は、 能力をアピールしたり、 力を誇示することはしない。 見たり、聞いたり…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第五十五章 赤ん坊のように純粋でいよう すばらしいものを 内に秘めている人は、たとえていえば、 赤ん坊のようなものだ。 無心な赤ちゃんを襲うものはいない。 害虫に射されたり、 毒蛇に噛まれたり、 猛獣が爪をたてたり・・・ 赤ちゃんは、そんなことには…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第五十四章 しっかりとした基礎づくり しっかりと建てた家は倒れない。 しっかりと身につけた信念は、 剥がれ落ちることがない。 子孫たちが、 末永く祖先を祀る気持ちを忘れずにいれば、 人柄や品性は ますます磨きがかかる。 村や町については、どうだろう…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第五十三章 平凡であること しっかりした志を持って、 リーダーであると自覚している人は、 大通りのような生き方を選択し、 脇道にそれないようにと心がける。 広い道は平坦で起伏がない。 単調で、つまらなさそうなので、 ふつうの人はつい、 横道を歩いた…

伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第五十二章 たおやかに生きる この世界は、 なにかから生まれ、 始まった。 そのなにかとは、 生み出す点では、母のようだ。 そんな母が産んだ子供が、 世界であり、 自然現象だ。 いいことも、 悪いことも、 いろいろなことが起きる。 そのつど、 母のよう…