伊藤淳子訳「心が安まる老子」

第六十七章 大きな器、小さな器


世の中の人はみな、私のことを、
大きな事ばかり言っているだけの
愚か者だという。
でも、
あるがままに生きる術を知っていて、
それを実践している大物だから、
愚か者に見えるのだ。


頭がよい利口者に見えるとしたら、
あるがまま生きることから逸脱して、
世俗的な、小粒な人間に
なっているということだ。


私には、宝のように大切にしている、
三つの信条がある。


ひとつは、慈しむこと。
ふたつめは、慎み深いこと。
みっつめは、決して人々の先頭に立とうとしないこと。


慈しむ心を持っていれば、
人々のために、勇気を持って決断したり、
行動することができる。
倹約や節約をすることは、
いつも満ち足りていることであり、
広く人々を救済することができる。
そして、人々の先頭に成り上がろうとしないからこそ、
各職務を担当する者たちが、信頼して、ついてくるのだ。
慈しむ気持ちなしに決断を下し、
倹約もせずに人々を救済しようとし、
それぞれの担当者をフォローすることなしに
自分ばかりが先頭に立つとすれば、
なにもかもが滅失する。


強烈なライバルがいても、
相手の気持ちになって
慈しむ心で接すれば、
かならず勝利する。


まわりの人々を大切に思い、守ることで、
人々の意識もまた、
固くひとつになる。


世の中を創造し、
育成する「存在」があるなら、
こうした行いをどこかで見ていて、
戦いがあったときは、
慈しみを持って守ってくれるはずだ。


  • 「心が安まる老子」の著者伊藤淳子さんからメールを頂きました

下記に掲載します。
大西様
「心が安まる老子」の翻訳者の伊藤淳子です。ブログでのご紹介、ありがとうございます。
今日(というか、さっき)テレビで、農薬散布によって、子供たちの神経回路の発達異常が起るというよう
なレポートを放映していました。農家のみなさまのご苦労を思うと、勝手に食べるだけの都会人たちの勝手な言い分は心苦しく思う部分もありますが、農業や食は、日本の未来をも担っていると考えますと、やはり有機栽培や、せめて低農薬で作っていただきたいと思うばかりです。
伊藤淳子